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タスキ小説~恋のらいばる~ ブログトップ
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第16話 「夏・海・カキ氷」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

梅雨空の合間をぬう様に、そして海開きに合わせたかように
太陽がジリジリと照りつける、そんなある日

バイト仲間数人と穴場の浜辺に、やってきた!

この浜辺は、店長が子供の頃、良く遊んでいたビーチだそうで
店長の書いてくれた地図を片手にその浜辺へと向かった。

メンバーは、俺、ナシモンさん、千里ちゃん、京子ちゃんの四人だ。
その砂浜は、岩場をよじ登り下り、もう一つ、岩場を越えた
所にあった、岩場を登っている時は、いやはや普通の海水浴場で
良いのではないだろうかと本気で思ったものだけれども

最後の岩を越えて、広がった視界は本当に南の島のような
それは素晴しいビーチだったので、四人ともにテンションが上がり
レジャーシートに荷物を置くと早々に海に飛び込んだ!

散々泳いだ所でじゃんけんで、かき氷を買いにいく事になった。

「じゃんけ~ん!ぽん!」予想どうりに、俺が負けた・・・
じゃあ、買ってきますと歩き出した所で、
千里ちゃんが「一緒に行きましょう」と嬉しい事に付いて来てくれた。
浜辺にナシモンさんと京子ちゃんを残し、二人で買出しに向かった。

第15話 「 駐車場までの帰り道 」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

【つぼ九】の新商品「びっくり!セブン」の登場で、
減り始めていた客足も徐々に回復のきざしを見せる。

スタッフみんなで試行錯誤したこの新商品は、
見た目はちょっと大き目のたこ焼きだが、
7個全ての中身がお楽しみになっている、まさにビックリ箱状態。
フカヒレが入っているモノもあれば、もちチーズ入りもある。
そして激辛ハバネロが入っている事により、グループ客からのオーダーが殺到。
ゲーム感覚で楽しんでもらえる事から、
この「びっくり!セブン」は一気に人気商品へと登り詰めた。

「今日も一日、お疲れ様でした~。お先に失礼します。」

仕事も無事終わり、軽快なステップで帰路へ向かおうとしたその時、
後ろの方から駆け足で追いかけてくる千里の声が。

「先輩~! 駐車場まで、一緒に帰りませんか?」

実はここ最近、このパターンが2、3度続いている。

新商品の話題を始まりに、家族の事や大学での出来事など、
次から次へと俺に話してくれる千里。

駐車場までのほんの数分ではあったが、
俺にとっても特別な時間になっていた事は間違いない。

第14話 「走り始め続ける」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

ナシモンさんが厨房から持ってきた、たこ焼きを食べてみると
口の中一杯に、辛さ。いや激痛が押し寄せた。

「なんれすか~これ~やばいれすよ~」

口の感覚も定かでは無い状態で、ナシモンさんを見ると
「これぞ、ビックリたこ焼きナシモン風」とニカッと笑った。

周りを見渡すと、その他のみんなは、美味しそうにたこ焼きを
頬張りながら、楽しそうな笑顔を浮かべていた。
俺は、厨房から持ってきた水をがぶ飲みして落ち着いた頃合で
ナシモンさんや他のバイト仲間が、話し合っている輪に加わった。

輪の中では、やれ、たこ焼きをもっと大きくして
おもちゃは入れられないか?とか、たこ焼き以外にも
こんなメニューを作ってみたらどうだろうか?とそこはまさに
さっきまでの、沈んだ雰囲気とは間逆に、活気で溢れ返っていた。

ナシモンさんの提案をきっかけに、店が変わり始めた瞬間だった。

俺は、「必要なのは、走り続ける事じゃない。走り始め続ける事だ。」
そんな、どこかで聞いた歌の歌詞を何故か思い出していた。

そして、この出来事を境に店は活気を取り戻して行ったのだった。

第13話 「 笑顔 」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「皆さんは、この店のやり方に不満とかありますか?」

少し興奮気味に俺は、スタッフのみんなに問いかけた。

確かに、キャンペーン実施中のライバル店の出現は、
つぼ九にとっても痛手である事は言うまでも無い。
だからと言って、お客様にくつろいで頂く為のサービスや笑顔を失ってしまえば、
本末転倒である。
短い時間であったが、俺は不器用ながらもその思いをみんなにぶつけた。

すると、一人の先輩スタッフが声を張り上げた。

「だからって、作り笑顔しろって言うのかよ!」

しばしの沈黙と共に、やり切れない思いがスタッフを包み込んだ、、、

そんな重い空気を差し置いて、俺は厨房へ向かい、
1つの料理をみんなに差し出した。

「え~、このタコ焼きを、みんなで食べませんか?」

スタッフ一堂、困惑した状態であったが、次第にそのタコ焼きに手を付け始めた。
すると、ダイスケの表情が一気に豹変した。

「ふわぁ~、ふわぁ~! 何ですかこれ~?」

そのリアクションがキッカケになり、スタッフ一堂、笑顔を取り戻したのである。

第12話 「ピンチの後に」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

休憩所に、賄いの鳥から丼を抱えて入ると、既に千里ちゃんが
店に戻る準備を終え、立ち上がったところだった。

今日は、金曜日の夜、いつもならば賄を食べる時間すらないほど
忙しく店内を駆けずり回り、声を張り上げているところだが
ここ最近、お客さんの入りが、徐々に落ちてきてしまっている。

というのも、俺の働く居酒屋つぼ九から程近いところに
全国チェーンの居酒屋が新しく出店し、開店キャンペーンと
銘打って、生ビール百円やら、千円飲み放題やらとどんどんと
あの手この手で、新規開拓を図っている為であろう事は
口にこそ出さないが、店長以下この店で働くみんなが
気づいていることだった。

閑古鳥が鳴いているわけでもなく、かといって目の回るような
忙しさというわけでもない、一日の営業が終わり、
帰り支度をするみんなの表情は、客が減っている事もあってか、
少し元気が無いように思えた。

みんなが、ぞろぞろと店を出ようとした、
その時、先輩のナシモンさんがみんなを集めた、
この店のピンチを切り抜け提案があるらしく、
若干興奮気味にその内容を話し始めたのだった。

第11話 「 似たモノ同士 」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「昨日は失礼しました!何て言うか、あの~、、、」

歓迎会での大失態を引きずったまま、微妙に気まずい状態で厨房に入る俺。
何も語らずに、ただひたすら揚げ物に没頭している店長の表情が、これまた不気味である。
ほとんど記憶が無かったとはいえ、家まで送り届けてくれた店長には、頭が上がらない。

そんな中、こちらをチラチラ見ながら食器を片付けていたダイスケが、俺に一言。

「昨日はご迷惑をおかけしました。何て言うか、その~、、、」

どういう事だ? 謝るのは俺の方では?
お互い記憶があいまいな為か、話が噛み合わない。

「要するに2人共、似たモノ同士って事ですよ。」
意味深な笑顔を浮かべながら、そこに現れたのは千里であった。

「意外な展開でビックリしたけど、楽しかったですよね?」
カラッと揚がった軟骨から揚げを盛り付けながら店長は、その問いに大きくうなずいた。

ダイスケと俺は、ホッとした表情を浮かばせなら、胸をなでおろしたのである。

第10話 「記 憶」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「お疲れ様でした~。」
酔いつぶれたナシモンさんと店長が乗ったタクシーを見送った。

残された千里ちゃんと俺ダイスケはほとんど同時のタイミングで
「ふぅ~」っとため息をついた。
そのピッタリさ加減と、ため息の後にこれまたピッタリのタイミングで
鳴り響いたクラクションが何だかおかしくて
千里ちゃんと二人で、ケラケラと笑いあったのだった。

ひとしきり、笑ったあと千里ちゃんが
何処か、お酒の美味しいお店知っていますか?というので
サラリーマン時代に、よく通っていた
アイリッシュBarへと二人、微妙な距離を置いて並んで歩いた。

木で作られた、Barのオシャレな扉を開けると、
顔見知りのグループがテキーラ大会を開催していた。
じゃんけんで負けた人がテキーラショットを飲む
それを永遠と続けるだけの大会だ!

流れで、千里とそのテキーラ大会に参加する事になり
俺が7杯目のテキーラを飲んだ事、千里ちゃんの笑い声

そこまでが、ガンガンに痛い頭で思い出せる限りの昨日の夜の記憶・・だ。

第9話 「大失態」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

第9話 「大失態」

「今何時? そ~ね、だいたいねぇ~!、、、」

お酒の勢いに任せ、一目散にマイクを握りしめる俺。
つい先程まで、ダイスケと千里、そして俺を混ぜた3人の歓迎会が行われていた訳だが、
2次会のカラオケで俺は大失態をさらす事に。

誰もリクエストしていないのに、連続でレパートリーを披露したかと思えば、
見ず知らずの隣の部屋へ乱入。
好きなだけ騒いだ後、通路で暴睡するという始末。

そんな泥酔状態の俺を、介護してくれたのは千里であった。
「先輩、ここで寝てたら風邪引きますよ~。」

うっすらと聞こえてくる天使の声、、、
「大丈夫ですか? 今、お水持って来ますね。」

そっと立ち上がろうとした彼女の手を、俺は握りしめてしまった。
その瞬間、時が止まった。しばしの時間が経ったのだろう。

ふと気がつくと、俺の目の前には、
店長の顔がこれでもかと言わんばかりに、接近しているではないか!

まったく持って記憶が無い俺は、店長と一緒にタクシーに乗り込み、
ダイスケと千里に見送られ、帰路へ向かうのであった。

第8話「歓迎会の夜」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「生五つ頂戴」今日は、客として「つぼ九」近くの居酒屋にやって来ている
俺。ダイスケが働いている居酒屋「つぼ九」では一月に一回
勉強も兼ねた飲み会を近隣の店で開く事にしているらしい。

今回は、某居酒屋チェーンで、新しく入った俺たちの歓迎かも兼ねての飲み会となった。
俺の隣には、先に「つぼ九」で働いているナシモンさんが座り
向かい側に座っている、強面ながら飛びっきりの笑顔が印象的な
店長のこれからの居酒屋とは、とか、店員の接客の仕方うんぬんを
ナシモンさんと二人でとうとうと聞かされていた。

俺は、千里ちゃんと話がしたいのに~と、千里ちゃんの居る方を
ちらちらと見つつ、店長の話を真剣に聞いている風を装っていた。
そして、三時間近く続いた、飲み会もお開きになり誰からとも無く
カラオケに行きましょう!という事になった。

そして居酒屋の地下にある。格安カラオケボックスへと流れてきた。
千里ちゃんは、どんな歌が好きなのだろうかと、考えていると・・
「それじゃ、ものまね行きまーす」とナシモンさんが歌い始めた。

第7話 [タスキ小説~恋のらいばる~]

第7話 「意気投合」

「いやいや、違うんだ。この人達は結局~、要するに5名様。」
驚きを隠せないまま、
事の成り行きをダイスケに説明する俺。

そもそも、財布を忘れたお客さんを探す為に、
ダイスケと共に店の外に出た訳だが、
旅行客の3人は何やら仲間割れ。

お酒の力は怖いモノで、中年3人組はやりたい放題。
あげくの果てには、通行人にまで八つ当たりをするという始末。
「おい! 俺の財布を取ったのは~、オマエか~?」
いきなりの八つ当たりに、20代後半と思われる若者2人は激怒。

険悪なムードが漂う中、俺は何とか両者の間に滑り込んだ。
「お客様! お忘れモノのお財布は、こちらで預かっています。」

しばしの時が流れ、状況を理解した旅行客3人と、
通りすがりの若者2人は、なぜだか意気投合。

「お兄さんの店で飲み直しますか~。新規5名様でよろしく~!」

予想外の事態に興奮した俺は、ダイスケと合流し、
再び店に戻る事になった。

こうして俺とダイスケの小さな旅は、
意外な展開で終わりを告げた。

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