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第6話「人だかり」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

ナシモンさんと俺ダイスケは、財布の持ち主を追って店を出た
ドスン!
店を出たところで、何かにぶつかった。良く見ると
店の出入り口には、何やら人だかりが出来ていた。

取り巻いている人達の表情は、
好奇心でワクワクしている様子だったが
人だかりの輪の中心部を見た瞬間、
一様に、怯えた様な表情を浮べるのだった。

困惑している俺を尻目に、ナシモンさんは
俺に向かって、ニカっといたずらっ子の様に笑うと
その人だかりの中へ中へと、人を掻き分けながら
突き進んでいったのだ。

取り残された俺は、満月のお月さんを
一人、眺めていた。

そして・・・数分後

人だかりの輪の外で、ポカンと突っ立っている俺に
驚きの表情を浮かべながら、興奮気味に
たった今、見てきた光景をナシモンさんは
早口で、話し始めたのだ。

第5話 [タスキ小説~恋のらいばる~]

第5話 「忘れ物」


俺がここ 【つぼ九】でアルバイトを始めてから、はや1ヶ月。
時が経つのは早いもので、もうゴールデンウィークに突入だ。
高速道路の割引サービスや、定額給付金の効果が出たのか、
旅行客らしき顔ぶれが、あちらこちらに並んでいる。

当店自慢の元気娘 千里も、熊本の実家に帰省中との事で、
いつも以上に店内は、少し違う空気をかもし出している。

そんな中、慌てて厨房に駆け寄ってきたのは、
一つ年下のダイスケであった。

「あのぉ~、さっ、財布の忘れ物です。」

返事だけは良いが、普段会話に混ざって来ないタイプの彼が、
自分から話を振ってきたではないか。
無論、先ほどレジ打ちをしていたのは、紛れもなくこの俺だ。
メガネを曇らせながらニヤニヤしている彼に、俺は一言。

「持ち主が見つかるまでは、帰れないぜ。」

彼は満面の笑みで首を縦に振った。

先ほど店を出て行った旅行客を探すべく、
俺とダイスケの小さな旅が、始まったのである。

第四話「男っぷり」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「休憩はいりまーす」
忙しく働いている厨房に一声かけて
厨房裏の休憩所に出ようとした
丁度、そのくらいのタイミングで

「きゃあぁぁぁぁぁ」と悲鳴が聞こえた
何だ!何だ!と、悲鳴のした休憩所に走っていくと
先週、一緒にアルバイト採用された、千里ちゃんがいた

「どうしたの?」と尋ねると俺の足元を指差したまま
動かない
その方向へと視線を移動させるとそこには
かなりのデカさの虫が
ジッとこちらを見ていたのだった。

うおーーー!
大の虫嫌いである俺は、今にも飛び上がらんばかりだった。
しかし、千里ちゃんの前でそんな格好の悪い姿を
見せるわけにはいかんと表面上は
かなりの余裕タップリ感をかもし出しつつ

気付かれないように取り出した
十数枚のティッシュを手に
その敵に立ち向かったのだった
しばしの格闘後、見事!勝利した俺に、千里ちゃんは

笑顔でお礼を言ってくれた。
俺の男っぷりを見せられたかな?
二人は急接近♪なんて思っているのは

俺だけだろうか・・・。

第3話 [タスキ小説~恋のらいばる~]

第3話 「休憩時間」


「失礼しました、すぐに取り替えますので。」
新人らしく、積極的に配膳するのは良いが、テーブル席を間違えてしまう俺。
しっかり確認を取れば良いものの、
忙しさのあまり、ついつい気が焦ってしまう。
そんな俺のドタバタ劇を、何も言わずに微笑んで見ている店長は、
不気味にさえ感じる。

休憩時間、厨房裏で一人タバコを吹かしていると、
背後から足音が近づいてきた。
振り向くとそこには【つぼ九】オリジナルの黒蜜きな粉パフェが、
俺の鼻に付かんとばかりに、迫って来るではないか。

「私、またやっちゃいました。先輩と一緒ですね。」

照れ笑いを浮かべながら現れたのは、
先週アルバイト採用された、今どきの女の子、千里であった。
彼女は、近くの大学に通いながら週3で、ここに来ている元気モノだ。
彼女とは何度も顔を合わせているが、
話をするのは初めてと言っても良いだろう。

ほんの数分ではあったが、こうして彼女と話が出来たのは、
お互いの失敗があったからであろう。

第2話 [タスキ小説~恋のらいばる~]

第2話「別れと出会い」


「そういうことだから」
彼女の最後の言葉は、こんななんとも抽象的な
別れの言葉だった
なぜ俺、ダイスケがこの居酒屋にアルバイトの面接を受けに
来ているのかというと

あれは、三ヶ月前、社内恋愛の末に失恋し、立ち直れないままに
その会社を辞めてしまったからだ。
しばらくの間は、落ち込みに落ち込んで
だらだらと過ごしていたわけだが、遂に貯金も底が見えてきてしまった。

こんな事ではイカンと仕事を探し始め
この居酒屋が、アルバイトを募集しているとの話を聞き
早速面接に来たのだ。

それにしてもこの店の店長の顔といったら
いかつい顔面をしていらっしゃる。
ただ、時折見せる
ギャップ甚だしい笑顔は、そのギャップ故か
好印象を抱かせろものであったりするから不思議なもんだ

その店長の話もさっきから、全くもって耳に入ってこない
なぜなら
一緒に面接を受けている女の子が気になって仕方ないのだ
こんな可愛い娘と働けるなんて・・・と

これから先の未来を期待せずには、いられないのだった。



つづく

第1話 [タスキ小説~恋のらいばる~]

●この小説は、DJナシモンとDJダイスケが、リレー形式で物語を創り上げていく、ラジオ小説である。

舞台はいわきにある居酒屋「つぼ九」
2人の男が1人の女性をめぐって繰り広げる、報復絶倒。
恋の物語。

~~~~~~~~~~

第1話 「 アルバイト 」

「ありがとうございました!」
「またお越し下さい!」
こうして俺の新しい1日が始まった。

俺の名はナシモン。
ついこないだまでは、派遣社員として製造業に没頭していた。
だがしかし、この経済不況の中、ついにクビを宣告されてしまったのだ。

求人広告をあさる日々。元気だけが取柄の俺はついに、
駅前に出来たばかりの居酒屋【つぼ九】にて、アルバイト採用の報告を受ける。
今の俺には、仕事があるだけでもありがたい。

ここ【つぼ九】は、大手外食チェーンに負けじと、
低価格とサービスにチャレンジしている、洋風ダイニング居酒屋だ。
店長の人柄も良く、スタッフ達には頼れる兄貴的存在だ。
くつろげるスペースとして、お客様にも大盛況。
まだまだスタッフを増員するとの事で、これからの出会いにも期待が膨らむ。

おっとそんな中、早くも面接に来ている2人組を発見。

テーブルの片付けに必死な俺は、、、
この後起こる事態を、予測してはいなかった。


つづく
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