SSブログ

第29話 「 直球勝負 」 [タスキ小説~恋のらいばる~]

「ありがとうございます!これがあれば千里も俺もニンマリっす。」

幸運を呼ぶであろう映画のペアチケット。
俺は勢いよく徳さんに向かって手を差し出した。

「ちょっと待った~! そのチケットは絶対に渡しません!」

背後から現れたのは、興奮気味のダイスケであった。

どうやら彼もこのペアチケットを、何としても手に入れたいらしい。
千里への思いを忍ばせながら、両者共に1歩もゆずらない状態が続く。

すると注文の品を取りに、千里が厨房に入ってきた。

慌てふためく2人をよそに、徳さんはペアチケットを千里に手渡し、
あとは宜しくとばかりに、そそくさと厨房から出て行ってしまった。
千里はそのペアチケットを見るやいなや、嬉しそうな表情を浮かべているではないか。

「そのチケット、徳さんがくれるっていうからさ、俺と一緒に観に行かないか?」

俺の先制攻撃は正に直球勝負。

「え~、ホントですか? 前からこの映画観たかったんですよ。」

千里は即答でOKサイン。
一方、ダイスケは唖然としながら言葉を失った。

こうして2人の初デートが、現実のモノとなったのである。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。